【2026年特別検証】なぜ「どやさ」の響きは色褪せないのか――今いくよ・くるよが笑いの歴史に刻んだ革命と、現代女性芸人たちへ続く系譜
いくよ くる よ 師匠の存在を抜きにして、日本の演芸史、そして女性芸人が当たり前に劇場の大トリを務める現代のお笑いシーンを語ることはできない。ド派手な衣装に身を包み、テンポの速い掛け合いと名物ギャグ「どやさ!」でお茶の間を沸かせた二人は、男社会だった昭和の漫才界に風穴を開けた文字通りのパイオニアだった。今いくよ師匠が旅立った2015年、そして今くるよ師匠が後を追った2024年を経た2026年現在も、吉本興業の劇場やテレビ番組では二人の逸話がリスペクトと共に語られ続けている。
京都の高校ソフトボール部での出会いから半世紀。互いを「いくちゃん」「くるちゃん」と呼び合い、私生活でも固い絆で結ばれていた二人の足跡はあまりにも深い。漫才ブームの熱狂から令和の演芸シーンに至るまで、いくよ くる よ 師匠が残した舞台への狂おしいほどの情熱と、楽屋で後輩たちを包み込んだ無条件の愛は、関西の演芸文化そのものを支える太い柱となった。時代がどれほど移り変わっても失われない、彼女たちの笑いの神髄に迫る。
1. 昭和の男社会を突破した「スタイルとキャラクター」の革新
1970年代当時、演芸場の楽屋は圧倒的な男性優位の世界だった。女性芸人といえば夫婦漫才の補助的な立ち位置か、自虐を過剰に売りにするスタイルが主流だった時代に、ふたりは全く新しい概念を持ち込んだ。
細身で華やかな「いくよ」と、ふくよかな体型をダイナミックに魅せる「くるよ」。二人のビジュアルの対比は単なる見た目の面白さにとどまらず、洗練された掛け合いと自己肯定感に満ちたポップな笑いへと昇華された。容姿を卑下するのではなく、自らの個性を武器として胸を張るスタイルは、当時の視聴者、とりわけ女性層から絶大な支持を集めた。
2. 代名詞「どやさ!」の爆発力と誕生の背景
今くるよ師匠の代名詞であり、今や流行語の域を超えて日本語のフレーズとして定着した「どやさ!」。ド派手なドレスの胸元や腹部をポンポンと叩きながら放たれるこの一言は、舞台上の空気を一瞬で変える圧倒的な破壊力を持っていた。
元々は「どうなの?」「どういうこと?」を意味する関西のニュアンスから生まれたとされるが、舞台上でお客さんの反応を巻き込みながら進化を遂げた。舞台上の予期せぬハプニングも、すべて「どやさ!」の一言で笑いに変換してしまう。そこには計算し尽くされた間と、長年の舞台経験に裏打ちされた圧巻のアドリブ力があった。
3. 楽屋の母であり姉であった――後輩芸人たちへの惜しみない愛
舞台上の輝かしい姿と同じくらい、演芸関係者の間で語り継がれているのが楽屋での温かな振る舞いだ。若手時代、お金がなくお腹を空かせていた後輩たちを居酒屋や寿司屋に連れ出し、満腹になるまでご馳走したエピソードは数知れない。
吉本新喜劇の座員から漫才レースに挑む若手まで、楽屋ですれ違うすべての人に「元気?」「食べてる?」と声をかけ続けた。単なる上下関係ではなく、同じ「笑いを提供する仲間」として温かく包み込む姿勢。二人が残したこの気風は、今も吉本芸人たちの間に伝統として脈々と息づいている。
4. 相方への深すぎる絆と「生涯現役」の美学
いくよ師匠が2015年に胃がんで急逝した際、くるよ師匠が見せた悲しみと、その後に見せた決意は多くの人々の胸を打った。病床の相方の元へ連日通い詰め、最期まで手を握り続けた絆の深さは、コンビという関係を超えたソウルメイトそのものだった。
相方を失った後も、くるよ師匠は「二人分の想い」を胸に舞台やテレビに立ち続けた。「いくちゃんはいつも横にいる」と語り、一人になっても屋号を下ろすことはなかった。最期まで芸人であり続けたその生き様は、演芸界における最高峰のプロフェッショナリズムとして語り継がれている。
5. 2026年の女性芸人シーンに受け継がれる遺伝子
2026年現在、賞レースや各種メディアにおいて、女性コンビや女性主導のユニットが目覚ましい活躍を見せている。彼女たちが口を揃えて尊敬の念を抱く対象が、まさに二人の存在だ。
「女性だから」という言い訳を一切せず、かといって男性の真似事でもない、自分たちだけの面白さを確立した姿勢。現代の若手女性芸人たちが伸び伸びと自分たちの表現を追求できる背景には、かつて茨の道を切り拓き、大通りを作った先達の存在があったからにほかならない。
6. 永遠に色褪せない上方漫才の宝
なんばグランド花月(NGK)の歴史を振り返る展示やアーカイブ映像において、二人の漫才映像は今なお観客の爆笑をさらっていく。時代を感じさせないテンポ感と、全身から溢れ出る圧倒的な多幸感。
単に「笑わせる」のではなく「客席と共に楽しむ」という漫才の真髄。2026年という時代を迎えてもなお、出囃子とともに思い浮かぶ二人の笑顔は、上方演芸の最高峰としてこれからも未来へと語り継がれていく。 (出典: いくよ くる よ 師匠(Yahoo!ニュース))