【2026年現地ルポ】地方温泉の常識を覆した「仏生山温泉」——デザインと湯の街づくりが手に入れた、世界を惹きつける日常の熱量

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【2026年現地ルポ】地方温泉の常識を覆した「仏生山温泉」——デザインと湯の街づくりが手に入れた、世界を惹きつける日常の熱量
【2026年現地ルポ】地方温泉の常識を覆した「仏生山温泉」——デザインと湯の街づくりが手に入れた、世界を惹きつける日常の熱量
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仏生山 温泉は、単なる日帰り温泉の枠組みを遥かに超え、日本の地方都市における「新しい休日の過ごし方」を提示し続けている。香川県高松市の南部に位置するこの場所は、近年、国内の温泉ファンだけでなく海外のデザイン系メディアからも熱い視線を浴びるようになった。2026年現在、多くの地方温泉地が集客に苦しむ中、なぜこの洗練された木造建築の湯処だけが異彩を放ち、人々を引きつけ続けるのだろうか。実際に現地へ足を踏み入れ、その熱量の正体を探った。

高松築港駅からことでんに揺られて約20分。古い木造家屋が並ぶ参道口を抜けた先に現れるのは、一見すると現代美術館のような低層のフラットな建物だ。館内に一歩足を踏み入れると、やわらかな光とヒノキの香りが鼻腔をくすぐる。近所の高齢者が洗面器を手に脱衣所へ向かう傍ら、遠方からの観光客が庭を眺めながら冷たいドリンクを味わう光景があり、まさに仏生山 温泉という空間が持つ独特の包容力が垣間見える瞬間だ。

建築家・岡昇平氏が仕掛けた「視線が抜ける」木造デザインの革新

この施設を語る上で外せないのが、建築家であり代表を務める岡昇平氏の存在だ。伝統的な「和風旅館」の重厚感や、昭和の「スーパー銭湯」の過度な装飾とは一線を画す。極限まで無駄を削ぎ落としたモダンな空間構成は、開館から20年以上が経過した今もなお、まったく色あせていない。

建物全体が大きな平屋仕立てになっており、中庭を囲むように廊下や休憩スペースが配置されている。壁の多くにガラスが使われているため、視線が屋外の緑や青空へと素直に抜けていく。視覚的な圧迫感が一切ないのだ。風が吹き抜け、光が刻一刻と表情を変える。ただ湯に入るだけでなく、「空間そのものを呼吸する」ような感覚がここにはある。

「美人の湯」を素肌で実感——トロトロと肌に絡みつく重曹泉の威力

デザインの秀逸さに目を奪われがちだが、本質であるお湯の質も極めて高い。泉質はナトリウム—塩化物・炭酸水素塩温泉。いわゆる「重曹泉」だ。

浴槽に身体を沈めた瞬間、思わず息を呑む。湯が驚くほど滑らかで、まるでシルクのローションに浸かっているかのようなヌメリ感が肌を包み込むからだ。重曹成分が肌の古い角質をやさしく落とし、塩化物成分が保温効果を高める。露天風呂には加温・加水なしの源泉かけ流し浴槽もあり、30度台前半のぬる湯と加熱された温湯を交互に入る「温冷交互浴」を楽しむ客の姿が絶えない。身体の芯から緊張が解けていくのを、誰もが静かに実感することになる。

ことでん「電車割引切符」が成功させたローカルモビリティの奇跡

公共交通機関との連動も、この場所が成功を収めている大きな要因の一つだ。高松琴平電気鉄道(ことでん)が発行する「仏生山温泉おんせん割符」は、旅行者の間で名物チケットとして定着している。

この切符には、電車の一日乗車券と温泉の入浴券、さらにはオリジナルうちわ(これが乗車券の役割を果たす)などがセットになっている。車社会の香川県において、あえて「電車に乗って温泉に行く」という体験価値を創出したインパクトは大きい。2026年の今も、レトロなことでんの車窓から讃岐の風景を眺めつつ、うちわを手にした旅行者が駅を降り立つ風景は、高松の風物詩となっている。

50メートルの本棚と縁側空間——「ただ時間を過ごす」贅沢

館内の廊下に沿って伸びる長い本棚には、古本やアートブック、漫画、地域文化にまつわる書籍がずらりと並ぶ。その長さは実に50メートルにおよぶ。

入浴を終えた客は、思い思いの1冊を手に取り、畳敷きの広間や中庭に面した縁側に腰を下ろす。ここでは誰も急いでいない。スマートフォンの画面をただスクロールするのをやめ、本のページをめくったり、庭の木々を眺めたりして過ごす。名物の自家製シロップを使ったかき氷を楽しんだり、軽食をつまんだりしながら、半日近く滞在する人も珍しくない。時間に追われる現代人にとって、この「空白の時間」こそが最大の贅沢なのだ。

「まち全体をひとつの旅館に」——門前町仏生山の新たな循環

仏生山温泉の挑戦は、敷地の内側だけに留まらない。かつて法然寺の門前町として栄えた仏生山の古い街並みを再生させる取り組みが、着々と実を結んでいる。

岡氏らが推進する「仏生山まちづくり会社」の構想は、「まち全体をひとつの大きな旅館に見立てる」という画期的なものだ。温泉が「大浴場」なら、近隣の古い町家を改修したカフェや雑貨店が「売店」や「客室」の役割を担う。参道沿いには近年、若手クリエイターが手掛けるパン屋や古着屋、クラフトビールバーなどが点在するようになり、散策の楽しみが増している。点ではなく面で街を楽しむ文化が、ここ仏生山にしっかりと根付いている。

2026年、私たちが本当に求めていた「日常の延長にあるサステナビリティ」

過度なインバウンド対応や観光地化の波に呑まれることなく、地域住民の生活圏と観光客の体験がごく自然に調和している。これこそが、仏生山温泉が長年にわたって支持され続ける理由だろう。

飾らない、気取らない。けれど細部まで美意識が行き届いている。2026年という時代において、旅行者が求めるのは一瞬の派手なエンターテインメントではなく、日常の延長線上にある心身の調律と、豊かな地域コミュニティの空気感だ。湯上がりの心地よい風を受けながら参道を歩くとき、この街が育んできた静かな熱量が、訪れた人の心へじんわりと染み渡っていく。 (出典: 仏生山 温泉(Yahoo!ニュース)

仏生山 温泉
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